2023年3月14日から16日に京都で開催されました日本生理学会に行ってきました。今回は第100回という節目の大会ということで、様々な大御所の先生方の講演や、生理学に留まらない分野の発表が多く見られました。印象に残ったことを3つ挙げさせていただきます。
1つ目はノーベル賞受賞者の対談です。今回、山中伸弥先生と去年ノーベル生理学賞を受賞したマックス・プランク研究所のスバンテ・ペーボ博士の対談でした。山中先生がリプログラミングの研究をした理由というのは、研究者の多くは分化のことをやっていたので、その逆をやろうと思って、多能性の再獲得についての研究をしていたとのこと。やっぱり大勢の人がやっている分野はレッドオーシャンと言いますか、競争が激しいので、まず研究のテーマを決める段階、もっと言ってしまえば、研究の分野を決める段階で(今後もポストを取っていくならば)できればマイナーな内容の方が良いのかなと思いました。しかし、分化能を遺伝子導入で再獲得できる、というアイデアは斬新すぎますし、成果を気にしていたら、なかなか真似できるものでないですよね...。またペーボ博士は昔から考古学が好きだったとのことで、楽しんで研究を追求している感じが伝わってきて良いなあと思いました。好きこそものの上手なれ、とか楽しむ者に如かずということですね。
2つ目は生物学の分野にも少しずつ情報学の波が押し寄せているなということを感じました。僕の研究がシングルセルのデータを解析する手法を開発することなのですが、生理学会とは普通に考えて親和性があまり高くないこともあり、あんまり理解してもらえないかと思って覚悟してポスター発表に向かいました。しかし、意外にと言いますか、理解してくれる人が何人かいたのが嬉しかったです。シングルセルの技術が最近流行っているのもありますし、機械学習の手法についてもパターン認識や関数近似の技術として概念的に理解されてきた感じがありました。具体的な方法については分からないものの、どういうものかは分かってもらえてきているのかなと思いました。
3つ目は英語喋れないといけないなということですね。論文読むのでリーディングはできるのですがスピーキングとリスニングは最低限できないと日本人としか話せないので視野が狭くなるなと感じました。当たり前のことなので、習得すべきなのですが、長くかかりそうです...。
以上です。今回6年生にして初めての学会発表ということで、良い経験ができました。あまり深く考えずに学会は行けばいいんだなと分かりました。卒業後も今のように研究が楽しく感じ続けられたら良いなと思っています。参加に際して、費用の援助をしていただいた学生研究会に深く御礼申し上げます。ありがとうございました。