この度、フランス・リヨンで開催されたISMB/ECCB 2023 に参加させていただきました。まず、リヨンの駅に到着した際には、街並みの美しさに心を奪われました。リヨンはローマ帝国の主要な交易拠点として繁栄し、フランスの商業と金融の中心地として栄え、リヨンの絹織物はヨーロッパ中に輸出されるほどの名声を得ていたということで、ローマ時代の遺跡や古代の建物が今もなお街の至る所にあり、歴史的な建物や美しい街並みが調和していて、まるで絵画のようでした。発表準備に追われ気が滅入っていましたが、美しい街並みを見たその瞬間から、この学会に参加することがどれほど特別な経験になるのかを感じ、前向きに挑戦することができました。
会場に向かう際に利用した公共交通機関にISMBの張り紙があるなど、街全体で参加者を歓迎する雰囲気を感じました。町中でもフレンドリーな人々に囲まれ、温かく迎えていただきました。現地の食事を紹介していただいたり、バス料金の支払い方を教えてもらったり、非常によくしてもらいました。初めての国際学会での発表で不安もありましたが、それらの温かい歓迎のおかげで安心して過ごすことができました。
学会自体も非常に充実しており、医学・生物学系分野出身の研究者と情報分野出身の研究者がディスカッションを重ね、最新の技術や知見、手法を用いて医学・生物学を前に進めようとしていることが伺えました。
また talk presentation の機会をいただいたことは忘れられない経験となりました。大勢の研究者の前で自分の研究を発表することは緊張しましたが、その後に多くの方々から声をかけていただけたことに喜びを感じました。異なる国や背景の研究者と交流し、新しいアイディアを得ることができました。人の輪が広がる瞬間を経験できたことは、私にとって大きな成長の機会となりました。
発表の準備を行う際に、自分の研究を整理し、自分自身の理解を深め、内容が伝わりやすいように現状得られているデータを整理しなおしたことは投稿論文作成にも直接つながるものと確信しております。また、現在の自分の研究の進捗を整理しなおしたことで、今後、自分の研究を論文としてまとめるためにどんな追加実験が必要か考える機会にもなりました。
自分の presentation 以外にもたくさんの学びがありました、特に自分が主に研究を行なっている single cell sequencing の分野の発展はめざましく、大量のデータが取得可能になったことで、その解釈を行うための手法開発が強く求められていることを実感しました。空間トランスクリプトームを始めとして、高い解像度でより大量のデータが取得可能となってきたため、細胞の中で起きている現象を正しく解釈することで、これまでのバルクの実験では見つけられなかった現象の制御因子について議論できるようになってきていると感じました。医学分野への応用も次々と進んできている一方で、激しい競争が繰り広げられている分野のため、自分自身も計画的に研究を進めなくては今回発表させていただいた研究は陳腐化してしまうとも感じました。精力的に研究に励んで、篩い落とされないようにしたいです。
そして、学会で発表されていた最新の情報技術にも驚かされました。グラフニューラルネットワークを使った細胞や遺伝子の関係を捉えるモデルや、GPTなどの大規模言語モデルを用いて遺伝子の配列情報を解析する研究など、バイオインフォマティクスの世界でも最先端の技術が活用されていることを知りました。これらの情報技術の進化によって、私たちの研究にも新たな可能性が広がっていることを実感しました。医学の勉強に励むとともに、数理・統計・情報科学分野の技術もフォローし、自分なりのユニークな研究ができる人材になれるように今後も勉学に励みたいと思います。現場の医学知識や臨床現場での経験が、本当に必要な研究をすることにつながると信じているので、正規のカリキュラムにも積極的に向き合いたいです。
ISMB/ECCB 2023への参加は私にとって大きな意義を持つものとなりました。リヨンの素晴らしい街並み、温かい歓迎、刺激的な学会、そして先端技術の発展に触れることができたことは、私の研究者としてのモチベーションを一層高めるものとなりました。今後もこのような国際学会への参加を積極的に希望し、発表・論文化につながる研究を続けられるように、さらなる成長を目指していきたいと思います。
手厚くご指導くださり、海外学会での発表という夢のような機会とご支援をしていただき、さらにご多忙中にもかかわらず学会参加にあたり幅広くサポートしてくださったシステム生物学分野の島村先生、小関先生、林先生、小嶋先生、廣瀬先生、普段からともに研究に向き合っている研究室のメンバーに深く御礼申し上げます。
最後になりましたが、今回の学会参加に際して支援して頂きました学生研究会の黒田啓介先生、安部小百合様に厚く御礼申し上げます。