お知らせ

4年水谷友香さんのGAME-TEI summer school 参加報告

GAME-TEI 2023 Summer School に参加して

名古屋大学医学部医学科4年
水谷 友香

1. 概要
 2023年7月10日から14日までの5日間、5th GAME-TEI Summer Schoolに参加した。このサマースクールは、毎年夏に開催されるプログラムであり、今年は韓国の高麗大学で開催され、GAME(Global Alliance of Medical Excellence)加盟国である7大学が参加した。今回のサマースクールのテーマは、プラネタリーヘルスについてカバーした。また、医学部だけでなく薬学部や看護学部の学生も参加するため、多職種連携についても学んだ。

2. 内容
(1) 事前学習
サマースクール開催前の6月にオンラインのプログラムがあり、プラネタリーヘルスとはなにか、また小児喘息の症例について講義をしていただいた。7月のサマースクールまでの事前課題として、自分の大学が行なっている、持続可能性を向上させるための取り組みについて調べた。自校のシステムを評価する際に考えるべき10のカテゴリーとして、リーダーシップ/化学物質/廃棄物/エネルギー/水/輸送/食品/医薬品/建物/購買 が挙げられ、私たちはそのうちの4つのカテゴリーをポスターにまとめた。また、日本において、気候変動が一因である健康疾患について調べ、ポスターとともにサマースクールで発表した。
(2) 講義について
プラネタリーヘルスの分野に詳しい先生方の講義を受けた。まず、地球の健康と人間の健康が密接に関わっており、人間の健康は地球の生態系に依存していることを学んだ。また、気候変動と健康への影響を学んだ。その主な原因は温室効果ガスの蓄積であり、健康への影響としては、心血管疾患、呼吸器疾患、免疫・アレルギー疾患、精神疾患の悪化などが挙げられる。また、プロフェッショナリズムについても学んだ。アドボカシー(提唱)活動についてどのような戦術があるかを学び、プラネタリーヘルスに対しての医療専門家としての責任についても学んだ。
(3) グループ活動について
参加する生徒は一グループ5.6人で異なる大学の学生達からなるグループに分けられた。五日間を通して、自校の医療システムを評価し、持続可能性を向上させるための、簡単で実現可能な地域的解決策を提案するという課題が与えられた。課題について各グループで話し合い、効果的なアドボカシー(提唱)の枠組みに沿って考えながら、解決案を最終日に提案してプレゼン発表した。

3. 感想
サマーキャンプでのそのテーマについての講義やディスカッションを通して、プラネタリーヘルスに関する知識や価値観を学ぶとともに、このテーマを学ぶことの大切さに気付かされた。実際に気候変動が健康に与える悪影響について学び、人間の活動によって地球温暖化などの気候変動がどんどん進む今日、持続可能な医療を提供することは不可欠であることをより理解した。それとともに、医療従事者や地域社会に対し、私たち全員がプラネタリーヘルスについて理解する必要があることを強く感じた。環境と人間の健康は相互作用し、地球環境の変化がもたらす健康への影響について理解し、現状の問題の重大さとその緊急性に気づく必要がある。そうすることで、私たち一人一人が、環境的で持続的なライフスタイルのためにできることを考えて生活するようになるだろう。プラネタリーヘルスというテーマについては大学の講義では学ばないため、私自身このサマースクールに参加したことによって、プラネタリーヘルスについて考えていくことの大切さを学んだため、このような講義や教育を行う必要性を強く感じた。
 また、世界各地の7大学の学生が参加していたため、大学による教育の違いや国それぞれの持続可能な医療に達するための解決策などについても学ぶことができた。講義中の意見交換時だけでなく、会食時やバスの移動時などにも他の学生たちと話す機会が多くあり、意見交換に加え文化的な交流もたくさんすることができ、非常に貴重で刺激的な経験となった。特に、SDGs世界ランキング上位国であるスウェーデンのルンド大学の学生達が参加しており、彼女たちから隙間時間などに話を聞くのはとても興味深かった。例を挙げると、スウェーデンは実際に環境に対して様々な取り組みが多く、首都ストックホルムなどの都市部では、ほとんどのバスがバイオガス(食品廃棄物などを燃やすことで得るエネルギー)で走るそうだ。他には、オーストラリアのモナッシュ大学では、プラネタリーヘルスに関する教育がすでに大学のカリキュラムに導入されているそうだ。このように、各国ですでに行われている取り組みについて知ることができたとともに、私たちも彼らの取り組みを見習って参考にしていく必要があると感じた。
 サマースクールには医学生だけでなく、薬学部や看護学部の学生がいたことも貴重な経験だった。私とは異なる職業の方の観点からの意見を聞くことができたのはとても良かった。
 上記は主に勉学・学習の観点についてであるが、サマースクールでは、韓国の文化に触れる機会も設けられており、毎日が充実していた。高麗大学の大学病院のツアーに加え、韓国の博物館見学、高麗大学のカフェテリアや図書室の利用など、どれも素敵な経験となった。また、何よりも、世界中から集まった素晴らしい人々と出会い、この先何年も続くことを願う友情を築けたことは、かけがえのない経験であり思い出である。

4. 今後の展望
このサマースクールで学んだプラネタリーヘルスについて、より多くの学生に学んでほしいと強く思った。プログラムに参加した学生の1人として、学んだことを他の学生たちに向けて教えるというような機会を設けることができるのであれば、ぜひみんなに伝えていきたい。さらに、それらを通して、私自身もプラネタリーヘルスに関する知識をより深め、将来医師になった時にも持続可能医療についての取り組みの改善に貢献していきたい。

5. 謝辞
今回の海外での課外活動におきまして、貴重な機会をくださいました国際医学教育学の粕谷教授をはじめ、Itzel先生、GAME加盟大学の先生方、支援してくださった学生研究会の皆様に心より感謝申し上げます。

講義・ディスカッションの様子
グループでの最終日プレゼン
名古屋大学チームのメンバー
サマースクール参加の学生達とのディナー