2023年7月23日から27日にかけてフランス・リヨンで開催された、ISMB/ECCB2023(The 31st Annual Intelligent Systems For Molecular Biology and the 22nd Annual European Conference on Computational Biology)に参加してきました。ISMBはバイオインフォマティクスの世界最大級の学会であり、今年は世界各地から2600名近くの参加があったそうです。
私にとっては初めての海外学会参加だったので、準備にも一段と気合が入りました。私はポスター発表を行ったのですが、ISMBはオンライン上での情報共有が充実しており、他の方が自由に発表内容を閲覧できるように事前にポスターについて説明した5~7分の動画を提出するように指示されました。当日現地に行く前に発表の内容を説明付きで確認できるというのは、研究テーマのスパンが比較的短く情報を大多数に向けて公開できる情報系の学会ならではだと感じました。このための英語原稿を作成したことで、ポスター発表の際に下地となる語彙力や説明の言い回しを身につけられたように思います。
学会参加を決めた時点では不十分なデータも多かったので、直前の1~2ヶ月はデータの整理と解析に集中的に取り組むことができました。研究の論文化に向けて大きな進歩になりました。
現地では数多くのポスター発表や口頭発表を聞くことができました。印象的だったのは、言語モデルを利用したタンパク質や酵素の形態予測が盛んに行われていたことです。数年前のAlphaFold(タンパク質の折りたたみ構造を原子の幅に合わせて予測する深層学習システム)の開発が最新の研究に強く影響を与えていることを知りました。私は自分が取り組んでいるシングルセル解析に関係する発表に注目していたのですが、同じシングルセル解析という分野でもこれほど多様なテーマが扱われていることに驚嘆させられました。
そんな中、自分自身もポスター発表を行うことができたのはとても良い経験になりました。ISMBでは1日あたり300枚以上のポスターが掲示されており、配置された場所が真ん中付近だったこともあり、本当に発表を聞いてもらえるのか最初は少し不安に思っていました。しかし実際にコアタイムが始まると、近しい研究分野の方や日本企業の方などが足を運んでくださり、研究に対するアドバイスをいただくことができました。一番強く印象に残っているのは、発表を聞きにきてくださった海外の研究者の方から『この研究はいつ論文にして発表する予定なの?』と言われたことです。まだ未熟な私がやっている研究でも、世界には興味を持って待ってくださる方がいるということがとても嬉しかったです。卒業までになんとか研究を形にしようという熱意が湧きました。
今回、学会直前に新型コロナウイルスに感染してしまい日本から一人で会場まで向かう、学会初日に道でスズメバチに刺される、翌日に学会会場のトイレの鍵が故障し中に閉じ込められる、など数々のトラブルに巻き込まれたのですが、最終的には無事に発表を終えることができ心から安堵しました。以前は海外渡航に対して不安が大きかったのですが、様々なトラブルを乗り越えたことで、結局はなんとかなるかもしれないと多少苦手意識が払拭されたのも学会参加の収穫だったように思います。
学会参加を通じてフランスの文化や食事に触れることができました。学会会場では定期的にコーヒーブレイクの時間が設けられており、飲み物やパンをいただくことができました。会場内には自動販売機がなく、代わりにコップと水筒が販売されており、各自でスタンドから水を補給するという形式で非常に新鮮でした。
フランス料理はあまり食べたことのない味のものが多かったのですが、中にはしっかり口に合うものもあり、特にエスカルゴが意外と美味しくて驚かされました。
また、最終日にはパリ観光をすることができました。凱旋門やエッフェル塔などの有名建築物や、ルーブル美術館、シャンゼリゼ通りといった印象深いスポットを実際に見ることができ、とても充実感のあるフランス滞在となりました。
お世話になっているシステム生物学分野のスタッフの皆様、また学生研究会のご支援によりこのような発表の機会をいただけましたことを、ここに深く感謝いたします。