お知らせ

4年亀井温那さんのInternational Case Discussion Summer School参加報告

LMU ICDSSに参加して

名古屋大学医学部医学科4年
亀井 温那

 10/9-13の5日間、LMU ICDSS (International Case Discussion Summer School)に参加させていただきました。このプログラムは、名古屋大学の提携大学であるドイツのミュンヘン大学(LMU)にて臨床症例のディスカッションを行うもので、臨床推論能力や医学的知識の向上を目標としています。今年度はドイツからLMU含む2大学、アメリカから2大学、ウクライナから6大学、そして日本から名古屋大学の学生が参加しました。

 本プログラムで行われたClinical Case Discussion (CCD)とは、LMUで用いられている臨床推論の教育メソッドです。The New England Journal of Medicineの教育用ケースレポートを題材に、学生主体で、英語での議論を行います。具体的には、問診→検査→プロブレムリストと鑑別疾患→精査→治療の順にプレゼンテーションが構成され、司会進行となるModeratorの学生が、議論・回答を担当するParticipantsの学生に対して、質問を投げかけながら、鑑別疾患を想定しながら確定診断まで進んでいきます。さらに、臨床の先生をClinicianとしてお招きし、セッション中に学生には分からない質問に答えていただいたり、実臨床に即したコメントを頂いたりします。1セッションは約3-4時間にわたり、プログラム中は毎日午前と午後に1セッションずつ、計10のセッションにParticipantsとして参加しました。

 まずセッションの感想です。学んでいる国も学んできたカリキュラムも学年も異なる学生が集まっているとはいえ、各臨床経過での患者の容態をどう捉えどういう鑑別疾患をあげるか、次に知りたいことで優先度が高いのは何でそのためにはどんな検査をどんな順序で行うのが適当か、といった議論においては共通認識ができていきました。それは、各疾患に対してある程度典型的なストーリー展開や経過が存在し、どの国の学生もそれを学んでいるためだと思います。しかし、何かがおかしかったり気になる部分があったりしたときに、まずそれに気づくこと、さらにすぐに検索する能力に長けている学生が多いと思いました。加えて、それを積極的に発言できる環境がありました。これらは、将来医療の現場に立ったとき、異なるバックグラウンドをもつ者同士が協力していくうえで、非常に大切なことだと考えます。名古屋大学でも有志でCCDが行われており、私はModulatorもParticipantsも参加の経験はありましたが、本場のCCDを経験できるというこのプログラムを通じて臨床推論能力や医学的知識の向上という目標のみならず、これらを肌で感じることができた濃い5日間になりました。

お揃いのTシャツでの集合写真

 滞在期間中は、CCDのセッションのみならず、LMUの学生が様々な企画を用意してくれていました。週末にはドイツの人々の余暇の定番であるハイキングに行って標高約1230mのEckbauerに登り、平日もFaculty Dinnerへの参加やLMUのバイオメディカルセンターの見学をさせていただくなど、短い期間でしたが現地でしかできない貴重な経験で充実していました。LMUの学生と話しているうちに、ブルガリアやルーマニア、ロシアやウクライナなど、彼らの出身がドイツにとどまらないことが分かりました。LMUの学生同士でも互いの出身国を知らなかったり忘れていたりするような状態だったので、お互いのバックグラウンドの違いが気にならないくらい皆が多様であり、共に学ぶ仲間として自然に過ごしている姿が素敵だなと思いました。また、彼らが普段はドイツにある大学の学生として自らの母国語でないドイツ語で学んでいるにも関わらず英語で開催される本プログラムに参加していることからも分かるように、様々な活動に熱心かつ積極的な学生が集まっており、毎日のランチやディナーがとても楽しかったです。私の滞在期間がOktoberfest直後で、これは毎年秋にミュンヘンで開催され1810年以来200年以上続く、世界中から600万人以上の人々が訪れる世界最大のビールイベントなのですが、泥酔して倒れる人が続発するため毎年LMUからCTを搭載した車が前もって派遣されているなど、現地ならではの話も沢山聞くことができました。

 滞在は、大変ありがたいことにホームステイでした。渡航前からオンラインのクラスで知り合っていた友人宅で、この出会いも有志の英語クラスへの参加のおかげです。彼女は私の滞在期間中、セッションのModulatorをした翌日に3日連続の国家試験を受けるという怒濤のスケジュールをこなさねばなりませんでした。大変忙しいにもかかわらず、空港への送り迎え、お家でのウェルカムディナー、大学病院までの道のりの案内など、挙げればきりがありませんが、本当に素晴らしいもてなしをしてくれました。このような尊敬すべき友人との出会いにも感謝しなければなりません。

 約1週間という滞在期間はあっという間でしたが、このプログラムに参加していなかったら得られなかったであろうかけがえのない経験、出会い、友情に恵まれました。今後は、参加した名古屋大学の学生として、学んだことをCCDのセッションに生かし、仲間に伝えていきたいと思います。最後になりましたが、今回の海外での課外活動におきまして、貴重な機会をくださいました国際医学教育学の粕谷教授、Itzel先生、参加大学の先生方と学生のみなさん、支援してくださった学生研究会をはじめとする、携わっていただいたすべての方々に心より感謝申し上げます。

ハイキングで歩いたパルトナッハ峡谷
ミュンヘンの中心マリエン広場