1. 概要
2023年10月9日から13日までの5日間、ドイツのミュンヘン大学(LMU)で行われたICDSS(International Case Discussion Summer School)に参加しました。Clinical case discussion(CCD)を通して、様々な医療専門職の著名な教授数名の指導のもと、学生たちは複数のサブスペシャリティにおける臨床判断能力、医学知識を向上させました。
2. 内容
NEJM(The New England Journal of Medicine)誌に記載された症例から毎日2つの症例を英語で討議しました。CCDの目的は、具体的な症例の臨床診断を行うと同時に、臨床的思考を学ぶことです。どのような鑑別疾患を考慮する必要があるのか、どのような検査をいつ行うのか、そしてその病気の治療法は何かを話し合います。司会進行役であるModeratorがディスカッションをリードし、臨床医であるClinicianが分からない質問に対して答えてくださり、専門家としてコメントして臨床経験を共有してくれます。今年度のICDSSは、ドイツから2大学(LMU・TUM)、アメリカから2大学(コーネル大学・ワシントン大学)、ウクライナから6大学、そして名古屋大学の学生が参加しました。アメリカの著名な教授2名をはじめ、LMUのゲスト講師がClinicianとして参加してくださいました。
月曜日から金曜日までの午前8時半から午後5時まで、1日2症例を、1症例あたり約3-4時間かけて討議しました。また、週末や夕方には合同レジャーや様々なプログラムも企画されていました。
3. 感想
プログラムの参加学生は皆各大学において優秀な学生の方ばかりで、非常にレベルが高く、たくさんの意見が交わされました。私は今までに、名古屋大学で行われたCCDや提携国とのオンラインでのCCDに参加し、ModeratorとParticipantの両方を経験したことがありましたが、海外で行われているCCDを実際に対面で参加したことはありませんでした。今回のICDSSに参加して思ったことは、名古屋大学で数回行われたCCDと比べた時、意見を発言するという積極性の違いを感じました。日本人の国民性が関係しているのかもしれませんが、意見を発言するということの大切さを改めて感じました。また、物事に対して、常に疑問を持って取り組んでいる学生が多いことに気づきました。他の人の意見をただ聞くのではなく、少しでも疑問に思ったことは積極的に聞くという姿勢を持っている学生が多かったです。これらの能力は、彼らが今まで生活してきた中で身につけた能力であると感じたとともに、私自身のその能力を今後向上させていきたいと思いました。
私がICDSSに参加するにあたって頑張ろうと思ったことの一つが、意見があれば積極的に述べることです。5日間のうち、初めはたくさんの意見が激しく討議されること、また参加する学生の知識の豊富さに感銘を受けました。CCDでは、まず患者さんの情報が次々に公開され、それらの情報をもとに自身のAssessmentを書き、その後プロブレムリストを作って鑑別疾患や必要な検査をリストアップしていきます。私は、自分が書いたAssessmentを数回発表することができました。発表したAssessmentに対して、Moderatorだけでなく教授の方からアドバイスを頂けたことは、今後の私の成長につながると信じています。
日中のCCD以外に、学生同士交流が深められるように様々な企画を用意してくださっていました。週末にはハイキングをし、平日はLMUのバイオメディカルセンターの見学やFaculty Dinnerもあり、とても充実していました。参加した学生と話す機会が多くあり、交流を深めることができ、非常に貴重で刺激的な経験となりました。特に、ワシントン大学の学生は皆MD-PhDプログラムに入っている学生で、現在研究を主にしている学生たちでした。私は神経に興味がありますが、神経分野を研究している学生が多く、その学生達から研究内容を聞くとどれも興味深いものばかりで、とても楽しかったです。
また、私はLMU-NU合同のUSMLE授業をとっているのですが、今までオンライン上でしか話したことのなかったLMUの学生達に実際に会うことができたことはとても嬉しかったです。さらに、今年の7月の5th GAME-TEI Summer Schoolに参加した際にお会いした教授や先生方とも再び会ってお話しすることができました。このように国境を超えて仲良くすることができるという出逢いに感謝しています。約1週間という期間でしたが、とても充実していて刺激的で、どれも素敵な経験・思い出となりました。さらに、様々な国から集まった素晴らしく優秀な学生と出会い、この先も続くことを願う友情を築けたことは、かけがえのない経験です。
4. 今後の展望
海外で行われているCCDを実際に経験することができた身として、名古屋大学で行われているCCDを今後も続けていくことに取り組むことに加え、ディスカッションのレベルも全体的に本場のCCDに近づけていけるように尽力していきたいです。また、今回の経験を自分自身の成長、自分の将来に生かせるようにこれからも頑張っていきたいです。
5. 謝辞
今回の海外での課外活動におきまして、貴重な機会をくださいました国際医学教育学の粕谷教授をはじめ、Itzel先生、ICDSS参加大学の先生方、支援してくださった学生研究会の皆様、素敵な経験をさせてくださった学生の皆様に心より感謝申し上げます。