この度 12 月 22 日に開催された 6th International Medical Student Research Conference に参加させて頂いた。この会合は 고려대학교 (Korea University) が主催するアジア・ヨーロッパ地域の提携大学に所属し研究活動を行う医学生のカンファレンスおよび交流会である。名古屋大学からは5人が参加させていただいた (写真1)。Korea University は서울대학교 (Seoul National University), 연세대학교 (Yonsei University) とともに韓国内で 3本指に入る名門大学だそうだ。学問だけではなくスポーツも盛んであり、고연전 (Korea Yonsei games) という日本における早慶戦のような伝統の一戦があるそうで、昨年今年と Korea University が連覇中と聞いた。キャンパスはアメリカの大学のように壮大で、特にグラウンド (写真2) や体育館 (写真3) がプロスポーツの施設に引けを取らない大きさのもので驚いた。エンターテインメントに対してもオープンでメジャーデビュー済み K-POP アイドルのライブが学内で開催されていた。私はアメリカの大学がスポーツに力を入れ、マネタイズも行う仕組みに好感を抱いており、日本も世界に通用する大学を産みだすにはこういったスポーツや文化でまず世界に通用するものを作るという姿勢をもつべきではないかという考えが強まった。
到着した日の夜は welcome diner を開いていただいた (写真4)。また、カンファレンス後にも evening session として交流会を開いていただいた。 Korea University のスタッフを交えた会と学生だけの会が設定されており、前者では大学での学びや研究環境について話を伺うことができ、後者ではお互いの将来の職業に関するプランや specialty 選択、結婚や留学などのライフプランについて腹を割った会話ができた。キャリアの今後や研究にどのくらいの熱量を割いていくかなどの悩みはどこの国でも似通っていると感じた。一方で specialty の選択については日本は自由度が高いものの、人気の科は非常に competitive で希望がかなわないことも多いという国の方が多かった。これまで基礎研究に従事してきた学生の中には、卒業後はより clinical science にシフトしていくだろうと話している学生もいた。
カンファレンスはアットホームな雰囲気の中進められた。ヨーロッパの大学、アジアの大学ともに基礎研究と比べて、抗がん剤治療や鼠経ヘルニア手術といった実際の治療に着目した臨床研究の割合が高かった。またB型肝炎の治療と予後、喫煙の疾患発症に与える影響などの Meta-analysis も多くみられた。参加している学生が全員医学生ということで疾患のトピックに関しては深い議論がくり広げられた。ヨーロッパの学生だけでなく、韓国の学生も英語での発表や質疑応答に慣れていたのが印象的だった。私の研究している分野はシングルセル解析とデータサイエンスの融合領域の内容であるが、研究の意義や結果についてうまく伝えられなかった感覚を得た。参加する学会の聴衆のバックグラウンドに合わせて内容を変え、短くわかりやすく伝える力が必要だと感じた。また論文 accept 済みの題材に関する発表については competition の対象になったようで、我々と一緒に参加していたシンガポールの学生は賞金を獲得していた (写真5)。
帰りのフライトまでの時間を中心に、現地で知り合った学生に Seoul を案内してもらった。今をときめく Global artists が生まれた K-POP の中心地の一つである 합정역 (Hapjeoung) や若者文化を感じられるストリートである 인사동 (Insadong)、川沿いの景色が美しい 한강 (Han river)、もともと旧 Seoul National University の周りの学生街として発展してきた地域でソウルを一望できる丘のある대학로 (Daehangno) などを案内していただいた (写真6)。李氏朝鮮時代から二度の世界大戦を経て形成されてきた両国の関係や歴史について話したり、韓国と日本の文化の似ている部分と異なる部分を紹介しあったりした。気温は -10℃ を下回っており、川が凍っていたのが印象的であった (写真7)。大学のスポーツ施設でも感じたが、街中の公園にもジムのような器具があり、身体づくりに対する意識の高さを感じられた。韓国は出生率が 0.7 台であり、Global な少子高齢化の先頭を走る国の一つである。公衆衛生的な観点でも喫緊の課題としてヘルスプロモーションや医療、財政関連トピックに関する関心の高さを感じさせられた。
今回のカンファレンスに参加させていただき経験できたことは、今後の私のキャリアにおける強いモチベーションの一つとなると確信している。普段、学会では純粋な研究者とやり取りする際の自身の姿勢として「とはいえ私は試験を受けなければいけない学生として忙しくしているし」などと言い訳じみた、斜に構えた部分もあった。しかし、今回のように世界各国の似た境遇の学生とともに過ごしたことで、自分がどう道を拓いていきたいのか、社会に対して何をしたいのかを改めて考えることができた。今はそのためにキャパシティを広げたいと考えている。
カンファレンスの運営や現地で案内、サポートをしてくださった Korea University College of Medicine の皆さま、派遣に際して様々なサポートをしてくださった国際連携室のスタッフの皆さま、学生研究会のスタッフの皆さまに改めてお礼を申し上げ、本レポートの結びとしたい。