この度私は、2023年12月22日に韓国のソウルにあります高麗大学で開催されました、6th KU International Medical Student Research Conferenceに参加し、研究発表を行いました。本カンファレンスは、KU Showcase 1、KU Showcase 2、Domestic Session、International Sessionの4つのセッションから構成され、私を含め、名古屋大学から参加した5人の学生は、全員最後のInternational Sessionで発表を行いました。どのセッションにおいても興味深い発表と活発な議論が行われました。KU Showcase 1とKU Showcase 2では主に観察研究を中心とした臨床研究について、Domestic Sessionでは既に論文として発表された研究について、International Sessionでは基礎研究について発表する人が多かった印象です。今回カンファレンスに参加した学生は、韓国と日本だけでなく、ドイツやイタリア、香港、シンガポールなどが出身の、英語が母国語ではない学生ばかりでしたが、全員英語で積極的にディスカッションを行っていました。
私は、長鎖非翻訳RNAの一種であるtaurine upregulated gene 1(TUG1)をノックダウンすることで、神経膠芽腫のテモゾロミド感受性を改善するという内容の発表を行いました。私は昨年の基礎医学セミナーにおいても同様の発表を行いましたが、経験不足もあり理想的な発表ができず、歯がゆい思いをしました。そのため、今回の発表では、論理やストーリーに矛盾や飛躍がないように意識してデータの補強をするとともに、複雑かつ馴染みのない研究でも、聞き手がスッと理解できるような分かりやすいプレゼンテーションを意識してスライドの構成を期限ギリギリまで吟味することにしました。その甲斐もあり、私の中では満足のいくプレゼン資料になっていたと思います。また、基礎医学セミナーの口頭発表の時にはあまりできなかった、事前の練習についても力を入れました。しかしながら、いざ発表を行ってみると、初めての英語による発表であることと、自分があがり症であることが重なってつい早口になってしまい、またもや苦い思いのする発表になってしまいました。また、質疑応答に関しても、想定される質問に関しては予めどう答えるか考えて臨みましたが、実際にされたのは、「動物実験のモデルは、現実のヒトにおける疾患を反映していると言えるのか。動物実験の結果と同様の結果が実臨床においても得られるのか」という基礎的な実験モデルの問題指摘であり、予想していなかったこともあってうまく答えることができませんでした。今思えば、「ご指摘の通り、動物実験のモデルが必ずしもヒトに当てはまるとは限らないのは事実です。だから治験を行う予定です。ただ、本動物実験では、ヒトの腫瘍細胞を免疫不全マウスに同所移植して治療を行っており、限りなくヒトにおける疾患を反映しているものと考えています」とスラスラ答えられれば良かったと思っています。
このように、今回の発表は、私の中では非常に反省の多いものになりました。研究者は、ただ研究が上手いだけでは不十分です。研究をするためには、自分の研究の有用性を他者にアピールして説得し、研究費をいただかなければなりません。研究者として生きていくためには、高い実験技術や考察力は当然として、プレゼン能力も強く求められるものと思っています。その点、私はまだまだ未熟であると痛感しました。今後、研究発表については、研究室のミーティングに積極的に参加して英語でディスカッションする経験を積むとともに、機会があれば国内外を問わず学会に参加し、自らの見聞を広げたいと思います。
また、個人的なことではありますが、今回の発表は、初めての英語での研究発表であっただけでなく、初めての国外渡航でもありました。言語もよくわからない異国の地に赴き、現地の方とやり取りを行ったり、同様に諸外国からやってきた様々なバックグラウンドを持つ方とやり取りを行ったりする中で、研究者としての英語力はまだまだ必要なレベルには到達していませんが、プライベートなやり取りにおいては、語学力は最低限でよく、必要なのは、ジェスチャーを使おうと翻訳ソフトを使おうと、どんな手段であれコミュニケーションをとろうとする意思なのだと、改めて実感しました。初めての海外渡航で右も左もわからない私を現地で支えてくださった、間島滉一郎さん、三浦宗一郎さん、守田悠彦さん、井上澪さんに感謝申し上げます。
最後になりましたが、この度は、大変貴重な経験をさせていただきました。研究についてアドバイスを下さった腫瘍生物学講座の近藤豊先生、鈴木美穂先生、脳神経外科の木部祐士先生、高麗大学カンファレンスの参加について惜しみないご支援を賜りました、国際連携室の粕谷英樹先生、長谷川仁紀先生、学生研究会の黒田啓介先生、安部小百合様をはじめ、すべての関係する方に、この場を借りてお礼申し上げます。