2024年3月18日から27日の10日間、ドイツ・Saarland州HomburgにあるSaarland大学の研究室Molecular Physiology(教授:Frank Kirchhoff 先生)を見学させていただきました。期間中は実験の体験の他にシンポジウムへの参加やラボミーティングで発表の機会をいただき多くの刺激を受けて充実した時間を過ごすことができました。
研究室はキャンパス内のCenter for Integrative Physiology and Molecular Medicine という神経、内分泌、免疫の相互作用の研究を目的とした研究所にありました。研究室ごとに区切られた大きなスペースの中に数々の実験室があり落ち着いた環境で実験ができる一方で、ガラス張りの会議室や各フロアにある共用の休憩スペースでは研究室の垣根を越えて先生や学生が交流しており10日間の滞在だけでも研究室内外の多くの方と話をすることができました。
実験では研究室の研究室テーマでもあるオリゴデンドロサイトと呼ばれるグリア細胞とその前駆細胞の分化と脳の発生についてqPCRや免疫染色の手技や解析を見学、体験させていただきました。英語で説明を受けて実験を教わることや、私が今まで行ったことがある手技でも正確に結果を出すために工夫していることをお互いに共有するのは初めての経験で時には苦戦しながら多くのことを学ばせていただきました。大学院生のプログレスミーティングに参加したときに意見を求められ必死にプレゼンの内容についていったのもとても勉強になりました。
見学したうちの2日間はKirchhoff先生が主催するシンポジウムに参加しました。分子学や臨床医学における性別の違いに注目した研究発表が行われ、アメリカなどヨーロッパ以外からも研究者が集まっていました。タルトやジュースが並んだレセプションや音楽家によるピアノの演奏会もあり、海外らしい研究会の雰囲気を体験することができました。研究発表ではがんの種類や骨折の治癒力の性差に着目した臨床研究や、脳の回路や損傷に特化した研究に触れることができ大変興味深かったです。
研究室で1番思い出に残っているのは最後にラボミーティングで研究発表をする機会をいただいたことと、指導してくださったBai Xianshu先生、Kirchhoff先生それぞれとディスカッションをする時間をいただいたことです。私の研究もオリゴデンドロサイトに注目しているので今後の研究の方向性について相談したところ様々なアドバイスをいただくことができました。私の拙い英語にも耳を傾け全く知らなかった知識や読んだらいい論文も教えてくださり、今後も研究を頑張ろうと強く思いました。さらにKirchhoff先生は教授室で1時間以上、私が聞いてみたかった研究者についての質問にも答えてくださいました。自分が知りたいことを追求することや、今の夢について語ってくださった先生はとてもキラキラとしており私もこんな風になりたいと思いました。
今回の滞在は研究以外でも多くの経験ができました。研究室の大学院生が誘ってくださった食事会ではドイツ料理とビールを楽しみながら隣の研究室の方とも交流することができました。留学生がとても多く、毎日自分の国のお菓子を持ち寄ってみんなで食べたりそれぞれの文化を共有したりしたのも楽しかったです。休日には世界遺産のフェルクリンゲン製鉄所やSaarlandの歴史博物館に行きドイツとフランスで係争地となった地域の歴史や文化に触れることができました。
今回の留学は半年前に海外の研究室を見てみたいと相談したところから始まりました。すぐにKirchhoff先生に打診してくださり英語でのメールの書き方の指導や渡航費のサポートをしてくださった分子細胞学の和氣先生、快く受け入れてくださったKirchhoff先生のご厚意に感謝申し上げます。このような貴重な機会をいただきこれからも頑張りたいと思いました。その他にも研究のご指導や書類手続きのサポートをしてくださった分子細胞学の先生方、スタッフの皆様、ご支援いただきました学生研究会の皆様、多くの方々に大変お世話になりました。この場を借りて感謝申し上げます。