お知らせ

5年鬼頭秀和さんの学会発表報告

AACR Annual Meeting 2024 参加報告書

名古屋大学医学部医学科5年 
腫瘍生物学所属
鬼頭 秀和

 この度私は、2024年4月5日から10日までの6日間、アメリカのサンディエゴで開催されました、American Association for Cancer Research (AACR) のAnnual Meeting 2024に参加し、ポスター発表を行いました。AACRは、がん研究の進展を目的とした国際的な学会で、毎年開催されるAnnual Meetingには、世界中の研究者、臨床医、企業の専門家など、数万人が集まり、最新の研究成果や技術、治療法についての発表やディスカッションが行われます。ポスターで研究発表を行うPoster sessionだけでなく、一流の研究者が参加者向けに講義をするEducational sessionや、世界中の医学生が研究発表をして交流するStudent session等がありました。

Student Sessionでの出会いとディスカッション
 私が6日間の学会の中で最も印象的だった企画の一つが、2日目に参加したStudent sessionです。ここでは、若手研究者、特に学部学生が集まり、互いの研究について発表し合い、意見交換を行います。お互い学部学生同士であるため比較的声をかけやすいということもあり、後日行う自分のポスター発表に活かそうと思い、端から順番にポスターを見て回り、面白そうな研究を見つけたらその研究者に話しかけ、議論をしました。その中で、とある香港の学生が、神経膠芽腫のテモゾロミド抵抗性を克服するという、私と全く同じテーマの研究について発表しており、一つ一つのFigureについて詳細に説明していただきながら、質問をしたりディスカッションをしたりしました。彼はYes-Associated Protein(YAP)と呼ばれるタンパク質を標的にしており、アプローチ自体は私とは異なっていましたが、実験手法やストーリーの組み立て方は共通している点や学ぶべき点が多く、大変勉強になりました。今回私はStudent sessionに発表を聞きに行く立場として参加しましたが、学生同士の交流は大変刺激的で、是非発表者としても参加したかったと思いました。

Poster Sessionでの研究発表
Poster Sessionでは、自分の研究を広く紹介する機会を得ました。私は、長鎖非翻訳RNAの一種であるtaurine upregulated gene 1(TUG1)をノックダウンすることで、神経膠芽腫のテモゾロミド感受性を改善するという内容の発表を行いました。これは、3年次の基礎医学セミナー、昨年12月に参加した韓国の高麗大学にて開催されたInternational Medical Student Research Conferenceで発表した内容を発展させたものです。高麗大学での発表では、基礎医学セミナーでの反省を生かし、発表の練習に力を入れましたが、初めての英語での発表であったこともあり、質問対応を中心に準備不足を痛感させられました。そのため、今回は、一緒に学会へ参加した藤田君や佐々木君、そして引率の西村先生にお願いをし、ホテルで夜遅くまで発表練習や質疑応答の練習を徹底して行いました。その成果もあり、拙いながらも数多くの方に自分の発表について説明をしたり、ディスカッションをしたりすることが出来ました。何より嬉しかったのは、数日前にStudent sessionで知り合った香港の医学生の方が、私のPoster sessionに来てくれ、じっくりとFigureの説明や議論ができたことです。全くバックグラウンドの違う人と研究1つを介して繋がれるということがすごく不思議な感覚で、同時に感動的でもありました。
ただやはり、自分の英語力不足は痛感しました。基本的に研究発表はデータが語ってくれるので私はそれを補足する程度で大丈夫なのですが、質疑応答やディスカッションに関しては、最低限の英語力が無いと深いやり取りができず、せっかく新しい着眼点やアドバイスをくださっているのに、非常にもったいないと感じました。英語は個人的な好悪に関係なくツールとして絶対に必要な物なので、比較的時間のある学生の内に苦手を克服したいと強く思いました。

謝辞
今回AACR Annual Meeting 2024に参加したことで、最先端のがん研究に触れることができたことはもちろん、多くの優れた研究者と交流することができました。特に、異なるバックグラウンドを持つ研究者とのディスカッションを通じて、自分の研究を多角的に見直すことができ、新たなアイデアやアプローチを得ることができました。さらに、Poster Sessionでの発表を通じて、自分の研究を他の研究者にわかりやすく伝えるスキルも磨くことができました。これらの経験は、今後の研究活動において大きな財産になると確信しております。また、個人的なことではありますが、私にとって今回は12月の韓国渡航に引き続き、人生2回目の海外渡航になりました。慣れない私を移動中や現地で支えてくださった引率の西村建徳先生、医学科5年の藤田智也君、佐々木慶太君にお礼申し上げます。
最後になりましたが、この度は、大変貴重な経験をさせていただきました。研究についてアドバイスを下さった腫瘍生物学講座の近藤豊先生、鈴木美穂先生、新城恵子先生、脳神経外科の木部祐士先生、そして、今回の国際学会参加にあたり惜しみない支援を賜りました、学生研究会の黒田啓介先生、安部小百合様をはじめ、すべての関係する方に、この場をお借りして心から感謝申し上げます。

学会会場における集合写真
Poster sessionで発表をしている様子