私は2024年12月20日から21日にかけて韓国の高麗大学で開催された7th KU medical student international conference に参加してきました。日本や香港、イギリス、アメリカ、ドイツ、イタリアなど他国の学生はもちろん高麗大学からも学生がのべ100人ほどが参加していました。基礎医学から、臨床医学まで様々な演題で口頭発表やポスター発表が行われました。私は新しい健康の概念positive healthについてポスター発表をしたのですが、審査員の先生からの質問や議論の中でこれからの研究につながるヒントが得られました。論文執筆にむけてさらに精度を高めていきたいと思います。2日間他国の熱意のある学生たちの発表を聞いてすごく刺激になりましたし、お昼ご飯や夜ご飯の時間にはそれぞれの国の医療事情や、医学部の様子、政治や経済に至るまでさまざまな話題で国際交流ができました。
特に印象的だったことは、他国の学生が低学年のうちから研究に関わり、附属病院や関連施設と共同で研究を行っていたことです。例えば、自大学の大学病院や関連病院での症例をもとにした研究がたくさんあり、学生のうちから臨床研究に参加できる体制があるのだなと思います。また、3Dプリンターを用いたシミュレーションの作成で従来の模型と比べてどう違うのか医師たちからフィードバックをもらう研究では、たくさんの医師からのフィードバックを集めており、学生の研究に協力的な雰囲気があるのかなと思いました。その他にも、校内ツアーをしていただいた時は施設の充実度に驚きました。特に印象的だったことは、学生の自主学習環境が整っていたことです。osce の練習に使えるシミュレーションルームが何部屋もあり、分娩のシミュレーターもありました。これらの設備を学生は自由に使えるそうです。また、図書館は4階建てで、学生数に対して十分な勉強スペースがあり、休憩するエリアも校内のあちこちにありました。高麗大学の学生に、学校終わったら何して遊ぶの?の聞いた時に普段は勉強しているから遊ばないよ、休みがあったら学校の近くでご飯食べるかなと言っていたので、その学習の熱意に応えられるような環境が整えられているのだなと思います。
主催校の高麗大学の学生たちはみんなフレンドリーで、海外から来た学生にもたくさん話しかけてくれました。韓国はどう?美味しいもの食べた?寒くない?と心配してくれただけでなく、日本のアニメや漫画の影響か、日本でたこ焼きが食べてみたい、たい焼きとたこ焼きは何が違うの?名古屋はどんなところ?行ってみたい!などと日本にも興味を持ってくれている子が多くいました。もし今後名古屋大学で行われる国際プログラムやカンファレンスがあったら、是非運営校の生徒として積極的に他国からの参加者にも気を配って盛り上げていこうと思います。
また、現在韓国では医学部の定員を増加させる政府の方針への反対や医師の労働環境の改善を求めて研修医や医学生がストライキをしているそうです。9割近くの学生が休学をしているそうで、その間に兵役に行く子や、アメリカなど他国の医師免許取得に向けて勉強している子などがいるそうです。日本でも少し前に韓国での研修医のストライキがニュースになっていたのを見たことがあるのですが、実際に当事者の医学生たちに現状や気持ち、考えを聞けたことはとても貴重な経験ができたと思います。特に記憶に残っているのは、韓国の世論の中で、医師は楽をしてお金を稼ぎ過ぎているという意見があるという話です。私自身、5年生の1年間臨床実習でさまざまな診療科を回った中で、どの科でも先生方が患者さんのために責任感を持って医療に向き合っていて、お忙しい業務の間に学生の教育に携わってくださっていたことを覚えています。どのように事態が収束するのか誰もわからないと言っていましたが、日本でも医療現場の課題が正しく社会や政府に伝わって、医師だけでなくコメディカルの方々を含め少しでも働きやすい環境に変わるといいなと思います。
最後になりますが、今回のカンファレンス参加にあたって、指導教員の宮崎先生、高橋先生、末松先生にはたくさんお世話になりました。また、今回の参加に際し中京長寿医療研究推進財団様にご支援いただきましたことをここに深く感謝いたします。