お知らせ

4年岩瀬直人さんの高麗大学校国際医学生研究カンファレンス参加報告

7th International Medical Student Research Conference 参加報告書

名古屋大学医学部医学科4年
システム生物学
岩瀬 直人

 この度、2024年12月21日から22日にかけて、Korea University主催の第7回国際医学生研究カンファレンス(7th KU International Medical Student Research Conference)に参加する機会をいただきました。本報告書では、このカンファレンスでの経験と得られた知見について詳細に報告させていただきます。

 本カンファレンスは、アジアを中心とした世界各国の医学生が一堂に会し、研究成果を共有し、国際的な交流を深めることを主な目的として開催されました。今回、名古屋大学からは私を含め5名が参加いたしました。
 開催校であるKorea University医学部は、1928年の設立以来、韓国の医学教育を牽引してきた歴史ある教育機関です。ソウル大学、延世大学と並ぶSKY(Seoul National University, Korea University, Yonsei University)と呼ばれる韓国のトップ大学の一つであり、特に近年は国際化にも力を入れ、世界各国の大学と活発な学術交流を展開しています。ソウル市城北区貞陵路161に位置する医学部キャンパスのMedical Building Number 1で開催された本カンファレンスでは、歴史的な建造物と最新の研究施設が調和した印象的な環境を体験することができました。Korea University Medical Centerは2021年にNewsweek誌により世界トップ100病院の一つとして評価されており、その充実した教育・研究環境を実感することができました。
 会議は2日間にわたり、口頭発表セッションとポスター発表セッションで構成されていました。口頭発表は一人15分(発表10分、質疑応答5分)で進行され、Brain & Neurology、AI & BI Medicine、Clinical Medicine、Cancer Medicine、Basic Medicine、Surgery & Rehabの6つのトラックに分かれて実施されました。ポスター発表は初日の夕方に90分のセッションが設けられ、発表者と参加者の間で活発な討論が行われました。各セッションには賞が設けられており、特に優れた発表には賞金が授与されました。名古屋大学からの参加者である隠岐くんが口頭発表部門で3rd Placeを受賞したことは、私たち参加者全員の大きな喜びとなりました。
 交流行事として、初日夕刻には大きな丸テーブルが並ぶ広々とした会場でWelcome Dinnerが開催され、韓国の伝統的な料理を楽しみながら参加者間の交流を深めることができました。2日目の夜には近隣のパブでChicken Beer Partyが催され、より打ち解けた雰囲気での国際交流が実現しました。これらの交流会では、研究に関する議論だけでなく、各国の医学教育制度や学生生活についても意見交換することができ、非常に有意義な時間となりました。
 発表内容の傾向として、臨床研究が基礎研究より多く見られ、特にコホート研究や治療成績の検討などが主流を占めていました。バイオインフォマティクス関連の発表は比較的少数でした。AI & BI Medicineセッションが設けられていたものの、機械学習やデータサイエンスの技術的側面に踏み込んだ発表は限られており、多くは既存のAIツールを臨床応用した研究でした。
 質疑応答では、興味深い展開が見られました。カンファレンス開始直後は、参加者の多くが英語での発言に躊躇する様子が顕著でした。しかし、高麗大学の教授から「このカンファレンスには英語のネイティブスピーカーは参加していないので、英語の上手さにとらわれることなく、医学的な議論に重点を置いて自由に質問してほしい」との励ましの言葉があり、その後は活発な討論が展開されました。私自身も口頭発表に対して質問を試みましたが、国際会議での質疑は初めての経験で、緊張のため英語での表現が不十分になってしまいました。
 私の研究テーマであるDeep Learningを用いた病理画像解析と空間オミクスの統合研究については、ポスター発表を通じて参加者と議論を交わしました。しかし、数理的な側面を簡略化し、臨床的意義を強調する形で説明を試みたものの、異なる専門背景を持つ聴衆に研究の本質的な価値を十分に伝えることは困難でした。特に、機械学習アルゴリズムの詳細や数理モデルの構築過程について、より分かりやすい説明方法を工夫する必要性を強く感じました。
 カンファレンスの合間を縫って、Korea Universityの学生の案内でキャンパス内を拝見しました。特に印象的だったのは、近代的な設備が整った図書館でした。自習スペースや、多数配置されたiMacなど、充実した学習環境に感銘を受けました。
現地学生との交流では、予想以上に深い対話の機会を得ることができました。夕食を共にした際、日本のアニメや漫画が韓国で広く親しまれていることや、若い世代の間では歴史的な問題を超えて日本文化に対する関心が高いことを知りました。特に印象的だったのは、医学部が2024年2月からストライキ中であり、授業が一時停止している状況について聞いた際の議論でした。医療制度改革を巡る問題は、韓国の医療界全体に関わる重要な課題であることを学びました。また、男子学生の間で兵役に関する話題が出た際には、医学生特有の悩みも知ることができました。医学部在学中の兵役と、その後のキャリアプランとの調整の難しさは、日本では経験し得ない課題であり、各国特有の事情を理解する貴重な機会となりました。
 本カンファレンスへの参加は、研究者としての成長だけでなく、国際的な視野を広げる上で極めて有意義な経験となりました。特に、自身の研究内容を異なる専門性を持つ聴衆に効果的に伝えることの難しさと重要性を実感しました。また、英語でのコミュニケーションスキルについて、特に専門的な議論における表現力の向上が必要であることを強く認識しました。
 研究面では、他大学の学生による最新の研究発表を通じて、自身の研究アプローチを見直す機会を得ました。特に、技術的な詳細と臨床的意義のバランスの取り方について、多くの示唆を得ることができました。また、国際的な研究ネットワークの構築という点でも、SNSでの連絡先交換など、今後の協力関係につながる種を蒔くことができたと考えています。
 今後は、この経験を活かし、より分かりやすい研究プレゼンテーションの方法を模索するとともに、国際的なネットワークの維持・発展にも注力していきたいと考えています。また、英語でのコミュニケーション能力の向上に向けて、定期的な英語論文の精読や、国際学会、国際カンファレンスへの積極的な参加を計画しています。
 本カンファレンスへの参加にあたり、中京長寿医療研究推進財団様から渡航費用を含む貴重なご支援を賜りました。心より感謝申し上げます。また、本カンファレンスを円滑に運営いただいたKorea University College of Medicineの運営スタッフの皆様、日頃より研究指導をいただいているシステム生物学教室の先生方、そして渡韓に関して様々な面でサポートいただいた学生研究会と国際連携室の皆様に深く感謝いたします。この経験を今後の研究活動に活かし、医学の発展に貢献できるよう、より一層精進してまいります。