2025年4月25日から30日にかけて、アメリカ・シカゴで開催されたAACR(American Association for Cancer Research)Annual Meetingに参加し、ポスター発表を行いました。AACRは世界最大級のがん研究の学会であり、世界中から数万人規模の研究者や医師が集まる非常に活気ある学会です。私が所属する腫瘍生物学講座では、これまでも多くの学生が5年次にAACRに参加しており、基礎配属の時から先輩方の姿を見てきた私にとって、今回この場に立たせていただけたことは大変光栄であり、嬉しく思っています。
私はこれまでに、国内の学会として昨年9月に日本癌学会でポスター発表を経験しており、今回が2回目の学会発表となりましたが、海外の学会は初めての参加でした。特に印象に残ったのは、やはりポスター発表の時間です。私の研究テーマは「膠芽腫(脳腫瘍の一種)におけるテモゾロミド(抗がん剤)による自然免疫の活性化」で、免疫関連のカテゴリーに分類されていました。周囲には免疫を研究対象とする発表者が多数おり、改めてこの分野が国際的にも注目されていることを実感しました。他の分野においても、数多くの素晴らしい研究が発表されており、今後がん研究はどのような発展を遂げるのだろうと、わくわくした気持ちになると同時に、自然とライバル意識も芽生えました。
初めての英語による発表ということで不安もありましたが、AACRでは来場者が自由にポスターを見て回り、興味を持った発表者に声をかける形式であったため、当初は「果たして自分のところに誰か来てくれるのか」という心配の方が大きかったです。しかし実際には、発表時間の3時間の間に欧米やアジア各国から多くの方がポスターの前で足を止めてくださり、簡単に説明してほしいと声をかけていただくこともありました。拙いながらも自分の言葉で研究内容を伝え、「興味深いですね」「面白いです」といったコメントを頂けたことは大きな自信につながりました。また、いくつかの質問を受けたことで、自分の研究を新しい視点で捉え直す良い機会にもなりました。
また、他のポスター発表も見て回りました。そこで得た学びは、他の研究者がいかに多角的にデータを取り、研究を進めているかということでした。特に、自分の研究分野と関連のあるポスター発表を聞きながら、データ収集の視点や実験方法、臨床応用の観点に大きな刺激を受けました。これを通じて、自分の研究をより多角的に進める必要性を強く感じました。特に、マウスを用いた実験の進行や、臨床的な意義を意識した研究の進め方に対して、新たな視点を持つことができました。今後は、自分の研究でもこれらの要素を取り入れ、さらに深い理解を目指していきたいです。
ポスター発表以外では、Plenary SessionやEducational Session、各分野の専門的なSessionなどに毎日参加しました。世界最先端の研究や考え方に触れる中で、自分の知識が広がるだけでなく、今後の研究への刺激を数多く受けました。アメリカという多様性に富んだ場だからこそ得られた経験や視点も多く、自身の視野を広げる貴重な体験となりました。
さらに、期間中には “2025 AACR RUNNERS FOR RESEARCH 5K RUN/WALK” というチャリティーマラソンが開催され、同行した先生方や学生たちとともに5kmを走りました。がん研究支援を目的としたこのイベントには非常に多くの参加者が集まり、ミシガン湖畔を走るという体験は、普段運動不足の私にとっては少し大変でしたが、思い出深い一幕となりました。
最後になりますが、日頃よりご指導いただいている腫瘍生物学講座の先生方、スタッフの皆様、学生研究会の皆様に心より感謝申し上げます。また、今回の学会参加にあたりご支援を賜りました中京長寿医療研究推進財団様にも、深く御礼申し上げます。