2025年10月29日〜31日に静岡県コンベンションアーツセンター・グランシップで開催された第84回日本公衆衛生学会総会に参加しました。
名古屋大学医学部医学科では3年次後期に約半年間の研究室配属期間がありますが、私は学生研究会や国際連携室の支援のもと、「基礎医学セミナー海外派遣留学プログラム」として米国のJohns Hopkins Bloomberg School of Public HealthにVisiting medical studentとして滞在する機会をいただきました。約4か月間のプログラムでは、米国の代表的な長期追跡コホート研究であるARIC研究 (Atherosclerosis Risk in Communities Study) のデータ解析に携わり、その成果を“Blood Pressure Variability in Midlife and Depressive Symptoms in Late Life: the ARIC Study”と題して今回の学会で口頭発表しました。当日の質疑応答では、研究手法の詳細や結果の解釈について新たな視点を得ることができ、論文化に向けて検討を加える点がより明確になったと感じています。
日本公衆衛生学会への参加は今回が初めてでしたが、企画や演題が非常にインクルーシブで、多様な参加者に開かれた学会であるという印象を強く受けました。解析的研究に加えて実践報告も多く、医療・保健の最前線で活躍されている保健所職員の方、制度設計や公的ビッグデータ構築を進める厚生労働省の方など、行政の立場からの発表が目立った点も特徴的でした。こうした多様性や包括性、そして実務との接続を重視する姿勢は、すべての人の健康が対象となる公衆衛生学の理念や、その分野としての広がりを体現しているように感じます。公衆衛生学関連の研究に携わる一人として、成果をどのように実践や行動変容に結びつけるか、という視点を忘れてはならないと改めて意識するきっかけになりました。
最後になりますが、Johns Hopkinsの松下邦洋教授には、留学中の研究計画立案からスライド作成に至るまで丁寧にご指導をいただきました。なにより研究グループに受け入れていただき、この上なく貴重な経験をさせていただいたこと、この場をお借りして心より感謝申し上げます。また、八谷先生をはじめ、本研究発表をサポートしてくださった名古屋大学国際保健医療学・公衆衛生学教室の皆様、さらに留学手続きや資金に関して長期にわたりご支援をいただいた名古屋大学学生研究会および国際連携室の皆様にも深く御礼申し上げます。