お知らせ

4年川瀬広大さんの学会発表報告

第98回 日本生化学会大会 参加報告書

名古屋大学医学部医学科4年
分子腫瘍学講座所属
川瀬 広大

 私は、2025年11月3日から5日にかけて国立京都国際会館で開催された第98回日本生化学会大会に参加し、「造血系における転写終結の多様性とその疾患関連変化の単一細胞解析」という演題でポスター発表を行いました。本研究では、健常人および骨髄異形成症候群(MDS)患者由来のシングルセルRNA-seqデータを用いて、早期転写終結を示すmRNAの同定・解析を行いました。

 当日は朝からとても多くの方が自分のポスターの前で足を止めてくださいました。発表では、聞き手の理解度を確認しながら背景知識を述べた上で、研究手法・内容の何が新しいかを端的に伝えることを心がけました。議論を通して、分子生物学に精通した先生方による鋭い指摘だけでなく、他分野の研究者の視点からコメントや疑問をいただくことも新たな気づきにつながりました。このような大規模の学会で発表する機会を得られて、本当によかったと感じています。

 さらに、今回は医学生共用試験(CBT)を受験する一週間前に参加したため、基礎医学のみならず臨床医学の知識も固まった状態でさまざまな発表を聴くことができました。「クッシング症候群は抑うつを伴う」「長期間の透析はアミロイドーシスをきたしうる」など、覚えなければならない教科書的な記述の向こうには多くの患者がおられることを忘れないように勉強に取り組んできましたが、それと同時に現象の根源を解き明かそうと努力する研究者が存在することを強く意識する機会となりました。

 メインホールでは、AIと生化学の未来についての討論会を聴きました。私自身、昨年度の基礎医学セミナー以降ほぼ毎日生成AIを使い、そのたびに機能がアップデート・自己最適化するのを実感していたため、特に関心のあるテーマでした。
 とりわけ重要だと感じたのは、「そもそも現代科学は人間の頭で理解できる範疇を超えている」という指摘です。確かに、今回の学会だけを見ても膨大な研究成果が並び、各々がどれほど確かな検証に支えられているのかを比較し評価することも、これらが相互に補完し合って形成する知識体系全体を把握することも、個人の能力では困難です。AIによる統合と人間による再解釈のプロセスが、今後の科学の一つの形になるだろうと考えます。

 最後に、日本生化学会大会への参加にあたり、ご指導・ご支援いただいた分子腫瘍学講座の方々および学生研究会の皆さまに、心より感謝申し上げます。