2025年12月19日および20日に、韓国・ソウルの高麗大学校にて開催されたKU Conferenceに参加した。本学会は、高麗大学校が海外の提携大学を複数招待し、医学生が主体となって企画・運営を行う点に大きな特徴があり、昨年私が参加した二つの国際学会とは性質を異にしていた。韓国国内の大学に加え、名古屋大学、またヨーロッパ、アメリカ、オーストラリア、香港などから合計18大学が参加し、非常に国際色豊かな学会であった。
私は本学会においてポスター発表を行った。これまでにも海外でのポスター発表の経験があったため、特段緊張もなく発表および討論に臨むことができたと感じている。ポスター発表では決められた発表時間がなく、自由な形式で議論ができる点が大きな魅力であると私は感じている。実際、本学会においては、高麗大学校の教授や副医学部長の先生方と直接議論する機会を多く得た。その中で、私自身が日頃から感じていた研究上の疑問について鋭い問いを投げかけていただき、自身の研究を改めて深く考え直す貴重な機会となった。
私が携わっている研究は、インフルエンザウイルスのタンパク質と宿主であるヒトのタンパク質との相互作用を探究・考察するというものである。ここで意識すべき点は、「感染制御のために宿主因子の作用を阻害することが本当に妥当なのか」という問いである。私が研究対象としているタンパク質については、その機能欠損が神経変性疾患を引き起こすという報告も存在する。仮にインフルエンザウイルス感染においてウイルス増殖を助ける役割を担っているとしても、他疾患の発症防止において重要な生理機能を果たしているのであれば、安易に阻害することはできない。このような根本的な議論を、ポスターセッションの場で現地の研究者や海外の医学生と直接交わすことができたことは、本学会参加の中でも特に意義深い経験であった。
そのような議論が評価されたのか、ポスター賞を頂戴した。このような栄誉ある賞をいただけたことを大変光栄に思うとともに、審査員の先生方に心より御礼申し上げたい。
国際学会に参加するたびに感じることであるが、海外の医学生は自国のみならず各国の医学教育制度や医師の働き方、将来のキャリアパスに強い関心があるように思われる。これは、多かれ少なかれ自国のシステムに対する疑問や葛藤を抱いていることの表れであろうと、私は推察している。実際、学会期間中の宿泊で同室となったJohns Hopkins大学出身の医学生は、「アメリカの医学教育システムがあまり好きではなく、将来的には海外に出たい」と語っていた。私自身も日本の医療制度やキャリア形成について考えることが多いが、疑念を抱くだけで終わるのか、それとも行動に移すのかによって、将来は大きく分かれていくのだろうと思う。本学会は、同年代の医学生と率直に意見を交わすことで、各々が置かれた環境において、葛藤しながらも懸命に歩んでいることを実感する機会となった。
学会以外で印象に残った出来事として、竹島(韓国名:Dokdo)を巡る問題が挙げられる。日本と韓国の間に領土問題が存在することは教科書に記載の周知の事実であるが、韓国ではこの問題が非常に大きく扱われていることを肌で感じた。その証拠に、地下鉄車両内のモニターでは、「Dokdoは韓国のものであり、日本が不法に占拠している」という内容の映像が英語字幕付きで放映されており、私を含む海外からの訪問者にもその主張が伝わる形となっていた。本稿で特定の政治的立場を論じる意図はないが、仮に政治的・歴史的問題が国際的な共同研究の障壁となるのであれば、それは極めて残念なことであると私は考える。研究や医学の発展において、避けがたい困難の一つとして政治的要因が存在することは事実であるが、研究者や医療従事者のみならず、有権者一人ひとりが社会や政治に関心を持ち、理性的に議論を重ねていくことの重要性を改めて感じるきっかけとなった。
本学会を通じて強く感じたのは、研究成果そのものに加え、「研究に向き合う姿勢」や「問いの立て方」を国際的な場で共有することの重要性である。特に医学生という立場においては、限られた時間やリソースの中で研究を行うことが多く、結果を出すこと自体が目的化してしまいがちである。これはまさに私自身の2025年の反省でもある。しかし、本学会で出会った多くの医学生や指導教員との議論を通じて、研究とは単にデータを積み重ねる作業ではなく、臨床や社会にどのように還元され得るのかを常に意識しながら進めるべきものであると再認識した。
また、国や大学が異なれば、研究環境や教育体制、医学生に求められる役割も大きく異なる。そのような多様な背景を持つ、しかし同じ世代の同じ医学生同士が、共通の関心である医学・研究を軸に議論できたことは、国際学会ならではの価値であると感じた。自国の医療や研究体制を相対化して捉えることで、初めて見えてくる強みや課題も多く存在する。本学会への参加は、自身の研究を国際的な文脈の中に位置づけるだけでなく、将来医師・研究者としてどのように社会と関わっていくべきかを考える契機となった。
今後は、自分が知るものが全てだと思わず、国際的な視点を持って自身がおかれた状況を相対化することにより、医学の勉強・研究において更なる高みを目指していく姿勢を継続していきたいと思う。
本学会への参加にあたり、ウイルス学の木村教授、三宅准教授、学生研究会の黒田准教授、安部様、ならびに国際連携室の先生方には、多大なるご理解とご支援を賜り、心より御礼申し上げます。また、旅費のご支援を賜りました中京長寿医療研究推進財団様に厚く御礼申し上げます。さらに、本学会の企画・運営にご尽力いただいた高麗大学校の先生方および学生の皆様、ならびに渡航期間中行動を共にした友人4名に、この場を借りて深く感謝申し上げます。