2019年9月、国立京都国際会館にて開催された第78回日本癌学会学術総会に参加した。今回は発表では本人の発表では無く、今後の研究に生かせる知見を得るための聴講という形での参加であった。癌研究における最新のトピックスを多く聞く事ができ、大変有意義な学会参加となった。
癌学会で聴講した発表の中で、特に近年話題になっていると思われるトピックスがいくつかあることに気づいた。それは「がん免疫における個別化医療」「がんゲノム医療」「人工知能を用いた自動がん診断」の3つである。体感では、全講演の1/3程度はこうした話題に占められていたように感じる。印象的であったのは、これらの分野のトップランナーである研究者たちが共同研究などで互いに連携しており、近年の癌研究が益々学際的な学問領域になっているようであった。これは、各分野が互いに深く連関していることによると思われる。がん免疫療法における問題点は治療が奏功する患者と奏功しない患者が混在しておりその見分けがつきにくい事、また薬剤が高価であり奏功が見られない場合その分多額の医療費が無駄になってしまう事である。こうした問題を解決するためにがん患者のゲノムを解読して医療に還元するゲノム医療が活用でき、ゲノムデータ含む膨大なオミクスデータから人工知能を用いて治療に有用な知見を得る事ができる、といったように各分野が相補的な関係にあることによって互いに発展しているようである。これからの癌研究に携わるには、こうした分野を深く理解している必要があると今回の学会参加を通じて感じた。
また、シングルセル研究について最新の研究を聞く事も今回の目的の一つであったが、日本ではまだ中々オリジナリティの高い研究というには至っていないようだという感想を抱いた。これからシングルセル研究を行なっていく予定であり、今後も研究の動向に注目したい。