このたび私は、NEURO2026 (第49回日本神経科学大会、第69回日本神経化学大会、第36回日本神経回路学会大会)に参加し、ポスターにてこれまでの研究成果を発表させていただきました。神経科学の幅広い領域における最新の知見に接し、自身の研究をより大きな学術的文脈の中で捉え直すことができた、大変貴重な機会となりました。
私は今回、研究成果をLate-Breaking Abstractとして発表させていただいたので、審査対象ではなく、さらに学会終盤での発表となったのにも関わらず、たくさんの方に発表を聞いていただくことができました。これまで国内外の複数の学会で発表を経験してきたこともあり、会場には私の以前の発表を覚えてくださっている研究者の方々も想像以上に多くいらっしゃいました。以前と比べて研究がどのように進展したのかについてコメントをいただいたり、自分では思いつかなかった技術的な工夫や今後の研究に活用できる手法を教えていただいたりすることができました。単に研究成果を発表して終わるのではなく、継続的な対話を通じて研究の進展を共有し、互いに議論を深められることに、学会に繰り返し参加し続ける意義を感じました。
一方で、今回の発表や研究者の方々との議論を通じて、自分自身の課題も明確になりました。研究の進展については説明できても、その周辺にある知識や関連論文の読み込みについては、まだ十分とはいえません。自分の実験結果を解釈するために必要な知識は少しずつ身についてきましたが、関連分野の研究がどのように発展してきたのか、他の研究者がどのような仮説や技術を用いて問題に取り組んでいるのかについては、理解が浅い部分が残っています。研究を一歩先に進めるためには、自分の実験を正確に遂行する能力だけでなく、既存の知見を広く読み解き、自分の研究とのつながりを見いだす力が不可欠であるということを切に感じるようになりました。これまで複数の学会で発表してきたことで、研究発表そのものには以前より慣れてきた一方、研究者として求められる知識の深さと、観察された事象や先行研究を結びつける能力について、改めて考えさせられました。
現在、私は医学部5年生となり、卒業後の進路が少しずつ現実的な問題として近づいてきています。その中で、医学を学ぶことの意味や、将来どのような立場から医療に貢献していくのかについて考える機会が増えました。AIが急速に進歩する現代において、医師の役割はどこまで変化するのでしょうか。診断や治療方針の決定をAIが担う範囲が広がったとき、医師ならではの専門性はどこにあるのでしょうか。また、遠隔医療が実臨床に広く浸透したとき、患者の治療に自分自身が携わることに対して、どこまで自信を持ち、どこまで価値を見いだせるでしょうか。一方で、疾患の仕組みを解明し、新たな治療法の開発につなげることを期待される医学研究者の役割は、今後どのように変わっていくのでしょうか。医師に求められる知識や技術を身につけることは、医学教育の重要な目的の一つです。また、医師は社会的にも大きな役割を担い、社会的地位や職業的価値も高い職業であると言えるでしょう。しかし、医学を学ぶことを、既存の職業に就くための単なる「訓練」にとどめてしまってよいのでしょうか。臨床医や研究者だけでなく、厚生労働省などの行政機関で医療政策や公衆衛生に携わる人材、あるいは医学と異分野をつなぐ役割を担う人材など、医学を学んだ先には、さまざまな可能性があるはずだと考えられます。それでも、医学部では臨床医になることがごく自然な進路として想定されているように感じます。少なくとも私の周囲で、こうした疑問を抱き、ただ医学を学び、医師国家試験に合格し、周囲と同じように診療に携わっていく、その先に自分は何者かになれるのだろうかと考えている学生は、どれほどいるのでしょうか。進路選択が近づいてきた今、こうした疑問はどうしようもなく稚拙ながらも、以前にも増して切実なものとなっています。
アルツハイマー病の病態解明に取り組み、本格的に論文をまとめる過程に携わる中で、私はようやく、自分の実験が単独で存在するのではなく、疾患の発症機序を明らかにし、治療法を考える大きな流れの一部であることを実感し始めました。医学研究とは何か、そして医学生が研究に取り組むことにはどのような意義があるのか。学会で多様な研究者の仕事に触れることは、こうした問いを自分自身に投げかける機会にもなりました。
今回の学会参加は、これまでの研究活動を振り返り、成長を実感すると同時に、自分の知識や視野の不足を認識する機会となりました。今後も研究者との対話や学術集会への参加を通じて視野を広げ、関連する知見を積極的に学びながら、自分の研究の意義をより深く理解していきたいと考えております。最後になりましたが、日頃よりご指導・ご助言を賜っております分子細胞学講座の先生方をはじめ、研究活動を支えてくださっている皆様、学会参加に際してご支援を賜りました中京長寿医療研究推進財団様に、心より御礼申し上げます。