2021年8月3日~8月6日に岡崎市の生理学研究所で開催された第32回生理科学技術トレーニングコースに参加した。各研究室による19の実習コースに2~4名が参加し、具体的な実験技術を包括的に学習するという企画だった。私は認知行動発達機構研究部門でもう一人の実習生とともに、覚醒下のマカクザルを対象とした電気生理実験を行うにあたって必要とされる技術を学んだ。この研究室では、サルの社会性を観察する実験が多くなされていた。例えば、ボタンの色によって、報酬であるジュースの飲み口が自分・対面にいるサル・廃棄口のいずれかに向く場合、サルはどの色のボタンを押すことを選択するか、というようなものである。
4日間のプログラムで特に勉強になったのはMATLABを用いたデータ解析法だ。サルの行動データを取った際に、視線の動きや脳の神経活動を示すLFPを記録するだけでなく、それを自動で解析させてどこで発火が起きているのかを一見してわかるように処理するプログラムを実際に操作し、記述を理解した。コードを実行するだけで数値データがグラフとして可視化されると、素早い解析ができるようになる。その他にも、サルに課題を行わせるための実験器具作成や、サル脳の標本作製などが印象的だった。
サルに報酬のジュースを与えるための電子回路装置を作成した。はんだ付けを用いた電子回路製作の技術は、実験装置を自前で作成できるため有用だが、医学部ではあまり身につける機会に恵まれない。このタイミングでごく初歩的な部分ではあるが、電子回路製作について学べたことは有益だった。
脳の切片標本の作製は、普段ヒヨコを用いて行っていたが、数十倍の大きさのサル脳の処理方法はかなり異なっていた。スライス装置は一回り大きく、実験操作も比較するとサル脳の場合の方がかなり大雑把な方法をとっていた。
最後に、今回の生理学トレーニングコース参加にあたり、中京長寿医療研究推進財団様にご支援いただきましたことをここに深く感謝しいたします。ありがとうございました。