私は2022年7月11日~29日の3週間、ドイツミュンヘンにあるLMUにて、TEI Summer School 2022 Clinical Pre-Programと、GAME 4th TEI Summer Schoolに参加させていただきました。
初めの2週間(7月11日~22日)には、ミュンヘン大学(LMU)のグロースハーダン病院にて神経内科学の実習をさせていただきました。実習を行ったグロースハーダン病院はドイツで最大の規模の病院であり、三次医療を提供する施設です。大学としても非常に規模が大きく、医学生は各学年800人以上が在籍しています。治療に関しては、臨床研究との関りが非常に強く、私が実習をさせていただいたオフィスでもほとんどの患者が臨床研究に参加していました。またLMUの医学部のカリキュラムとしては、5年次から臨床実習が始まる名古屋大学と異なり、3年次から病院実習が始まり、6年次には既に初期研修に似たクラークシップを行います。全ての医学生が基礎・臨床の研究室で卒業論文を作成する必要があり、3年、4年次から研究室に通い始めて休日も夜遅くまで研究に励む姿が非常に刺激的でした。
そのような病院で2週間私が配属となったのは、神経内科学の外来診療の中でもパーキンソン病、パーキンソン症候群、ジストニアなどに対するBOTOX治療を行っているFietzek先生と、Katzdobler先生の外来オフィスであり、非常に希少な興味深い症例も数多く見学させていただきました。外来では主に、紹介状を基に病歴聴取、神経学的診察、認知機能検査を行い、必要のある患者にはボツリヌス毒素を用いたBOTOX注射、臨床研究に使用するための採血、腰髄穿刺などを先生方自ら行っていらっしゃいました。また、私自身が3年次の基礎医学セミナーにて筋萎縮性側索硬化症(ALS)の基礎研究を行っていたという背景もあり、パーキンソン病外来だけでなく、運動ニューロン障害疾患の外来も数日見学させていただきました。こちらでは、英語通じる患者さんの神経診察を私一人で実施することを許可していただき、先生のご指導の下、何度も英語での神経診察を練習させていただきました。
7月25日~29日の5日間は、GAME 4th TEI Summer Schoolというサマースクールに参加させていただきました。毎年夏に開催される、GAME (Global Alliance of Medical Excellence)加盟の6大学(University of Bologna, CUHK, LMU, Monash University, Nagoya University, Korea University)によるサマースクールの第4回として、今回は各大学から医学部、薬学部、看護学部の学生が集い、LMUやミュンヘン近郊の施設を会場に、多職種連携(以下IPC; interprofessional collaboration, IPE; interprofessional education)のワークショップを行いました。また、今回のサマースクールの最終目標は各大学におけるIPEの新カリキュラムを考案し、各々が持ち帰ってそれを実行することにあります。
初めの2日間はミュンヘン市内にあるLMUのキャンパス、上記のグロースハーダン大学病院にて活動をしました。初日には、各学部生が互いの職種についてどこまで知っているか、各国のメディカルチームの構成や各職種の業務にどのような違いがあるかなどの問題を考え、様々な意味で「他を知る」というイントロダクションを行いました。さらに、実際にシミュレーターを用いて多職種による病棟回診の体験をしたり、IPC、IPEに関するレクチャーを受けて知見を深めたりしました。2日目にはグロースハーダン病院にて各大学や主にLMUの多職種連携に係る研究をまとめたポスターセッションを開催して、さらに踏み込んだ意見交換をしました。午後には実際に多職種連携を高いレベルで実施していらっしゃる緩和ケア病棟にお邪魔して見学をさせていただきました。
後半の3日間にはミュンヘンから東にバスで2時間程移動したところにあるChimsee湖に浮かぶFrauenchiemsee島でワークショップを行いました。ここではサマースクールの最終目標を達成するため、2日間にわたって自国のIPEの問題を鑑みて新カリキュラム案を企画し、多職種・多国籍・多文化からのフィードバックをいただいて、さらに案を練り直すという作業を何度も繰り返しました。さらに多国籍グループだからこそ達成が可能なINIPC; International interprofessional collaborationについても、何を目標とするか、そのためにどのようにアプローチできるかという議論を交わしました。最終日にドイツ最高峰Zuspitze山の山頂にある研究センターHelmholtz Zentrum Münchenに移動し、2日間のワークショップの総括として、各大学チームで企画した新カリキュラムを1枚の紙に綴り、各々の大学の学長はじめ多くの先生方宛にビデオレターとして収録しました。
サマースクールの5日間全体を通して、衣食住、学習を含む全ての側面で常に6大学の学生が共に行動し、少しの隙間時間、会食時間なども文化交流、意見交流の場と化していたことが非常に印象的であり、刺激的でした。5日間のプログラムとしてFischer教授をはじめとするLMUの先生方、GAMEの先生方が入念に企画していただいた内容はもちろん、それ以上の国際交流も果たすことができ、非常に充実し濃密な5日間であったと感じます。ただ、今回のサマースクールのゴールは私達名古屋大学でのIPE、IPCを活性化することにあり、今回新たに作成したIPEカリキュラムをしっかりと実行に移し、創意工夫を凝らしてさらに発展させていくまで、名古屋大学代表として仕事を果たしていきたいと思っています。さらに、それらを通して、私自身もより多職種連携の知識を深め自分の将来に生かせるよう学んでいきたいと思います。
今回の海外派遣において、中京長寿医療研究推進財団様にご支援頂きました。また、お忙しい中ご指導いただきましたLMU神経内科のLevin教授はじめ、Fietzek先生、Katzdobler先生、GAMEの先生方、準備期間、現地での3週間に渡り全面的なご支援を頂きました、LMU国際部事務のVonderhagen様、貴重な機会をくださいました国際医学教育学の粕谷教授をはじめ、Bustos先生、病院実習のご支援を頂きました名古屋大学神経内科学勝野教授、学生研究会の黒田先生、事務の安部様、公私共に素敵な経験をさせてくださったLMUの学生の皆さんなど、お世話になりました全ての先生方、学生の皆様にこの場をお借りして深く感謝申し上げます。有難う御座いました。