インタビュー

海外の学会へ参加することも
必ずあとで役立つ経験になります。

名古屋大学大学院
医学系研究科
神経情報薬理学 教授
貝淵 弘三 PROFILE ※2013年3月当時

研究とは、世界の常識と対峙すること。

私が研究に携わったきっかけは、医学部時代にあります。後に私の恩師になる、Cキナーゼという酵素を発見された西塚先生が教鞭をとっておられた、生化学の講義を受けたことがはじまりでした。それまで医学部で学んでいた物を覚えるタイプの勉強とは違い、論理的な学問を使って病気や代謝、癌などを理解するというアプローチが当時の私には新鮮だったのです。興味の向くままに先生の教室を出入りするうちに、卒業後の進路が決まっていました。研究の面白さは、問い自体を自分で考えなければならないところ。自分の能力を総動員して、世界の常識と対峙して良いアイデアを出していくプロセスが、非常にエキサイティングですね。

全身全霊で研究を積んだ上に
偉大な発見がある。

学生には、若いうちに基礎研究を積む重要性も伝えたいですね。ノーベル賞を受賞した山中教授は私の後輩にあたりますが、彼がなぜiPS細胞のような偉大な発見ができたかと言えば、彼が情報も人材も充分にある環境の中に身を置いて、全身全霊で基礎研究を行い研究に力を注いできたからです。そうでないと、物事の一面しか見えないので結局正しい結論にたどり着くのは難しい。彼は本当に努力家で、情熱家で、素晴らしいリーダー。人間として魅力的で、上下関係に関わらず誰もが力を貸したくなるような人柄です。研究は一人より組織で行うことが多いので、そういった人間力もいい仕事をする秘訣ですね。

海外の研究者と
渡り合うカギが留学にある。

私は1985年から2年間、当時は日本にまだ根付いていなかった分子生物学を学ぶため、スタンフォード大学近隣の研究所に留学しました。分子生物学の生みの親であるノーベル賞受賞者が2人も在籍していて、非常に楽しく効率よく学べたと思いますが、学問以外の面でも留学経験から得たものは大きいです。その土地の文化を肌で感じ、自分と同じような若者や社会が何を考えているのか知っていると、海外への壁やコンプレックスが消えるのです。そのおかげで、海外の学会へ出席する際は、私は誰とでも気軽に会食へ行けます。食事をしながら今後の方向性や共同研究の話、お互いの研究内容について意見交換することも、大事な海外交流ですから。

チャンスを与える準備はできている。

学生たちは、研究の道に進む不安を本能的に感じ取っているんだと思います。研究者として成功するには、能力だけでなく運も必要なのです。でも、はじめから自信のある人はいません。私も、大学院入学時に恩師に「今までどれだけ優秀でも、研究にはまた違った力が必要。ダメならダメと、早めに言ってあげます」なんて言われていましたから。臆病になりすぎず、まずは飛び込んでくれたらと思います。他の研究者との情報交換の場や、海外の学会へ参加する機会など、経験を伸ばすチャンスを与える準備はできています。もちろん研究結果は大事ですが、まずはそのプロセスを楽しみながら、遊び心を持って研究に臨んでほしいですね。